余命3ヶ月から奇跡の生還を果たした、
善本考香さんへの覚田義明からの
治療録インタビュー
〜疑って、信じて、あきらめない〜
プロローグ
覚田義明(以下、覚田):
こんにちは。覚田です。
善本考香さん(以下、考香さん):
善本です。
覚田:
今回、善本さんのがんについてインタビューして行きます。よろしくお願いします。
考香さん:
よろしくお願いします。
覚田:
普通だったら、治療を諦める方もいらっしゃいますが、考香さんは様々な治療をされていますよね。
考香さん:
そうですね。最初に見つかった一つのがんがあって、3カ所に転移していて、それが最初に見つかったのですが、それから2年と2ヶ月かけて、最終的には12カ所、全部治していただきました。
治療は、手術3回・化学療法2回・同時化学放射線療法1回・動注塞栓術2回・重粒子線治療1回。
モグラ叩きのように12個全部消して、結果的に12人のお医者様に治していただきました。
覚田:
なんとなくイメージでは、ゴットハンドの天才外科医が一人いて、その人が治したように思うけれども、そうではなくて、12人のお医者さんに、話を聞いたり、検査してもらったり、治療してもらったり、手術してもらったりして、12人のお医者さんが助けてくれたと言うことですね。
なぜ、そんなにがんばることができたと思いますか?
考香さん:
私自身が、シングルマザーだったということと、その当時、小学6年生だった娘と2人暮らし、心臓の手術をした母が近くに住んでいて、何かあれば私が面倒をみるという状況で死ぬ訳には行かなかったですね。
覚田:
なるほど。
がんの治療している方は完治じゃなくて根治って言うんですよね?
今は根治されて、今日も美味しくいろんなものを食べましたけど、元気になられて。2年2ヶ月かかって全てのがんを治して行ったんですね。
まさか、私が。。。
覚田:
私は、元々、アップルストアをいうところで、コンピューターの販売したりサポートしたりしてたんですよ。お客様は、だいたい壊れたと言って来られるんですけど、皆さん言われるのが「昨日まで壊れてなかったんです。電源入れたら壊れたんです」と。
「だいたいそういうもんですよ」と言うんですけど、がんの方々も突然告知される訳ですよね。
考香さん:
そうですね。突然告知ですね。
覚田:
昨日までは何ともなかったのに。しかもがんて痛くないじゃないですか。
考香さん:
はい。痛くないですね。
覚田:
体の調子が悪いわけでもないでしょ。症状も変わらない、何にもわからないで起こってて、検査をすると初めてわかるということですけど、善本さんの場合は症状から始まるんですよね。
最初、どういう症状だったんですか?
考香さん:
お風呂場でシャワーを浴びてたんですよね。
その前に引っ越しとかいろんなことが重なって忙しかったせいもあって、やはり体が疲れてるっていうのは半年ぐらいは感じてたんですよね。ですけど、まぁ歳も歳なので、40歳も過ぎたしと思って、何ともなく過ごしてたんですけど、ある日の夏、少しぬるま湯でシャワーを浴びてて。
私すごく怖がりなんで、水が怖くて目を必ずつぶっているんですけど、
覚田:
お水が怖いんですか?シャンプーハットってのがありますけど。。。
考香さん:
私、小学校の時までずーっと使ってました。お水が怖くて(笑)
それで、前かがみになって、シャワーしているとお腹を圧迫しますよね。
プラスティックの椅子の上に座っていたんですが、何か温かいものを股の下に感じて、チラッと目を開けたら、赤い血がダーッと排水溝に向かって流れていたんです。びっくりしちゃって。
覚田:
自分ではわからないんですね?
考香さん:
わからないんです。何かぬるいものが股の辺りから流れてるみたいな感じで。
目を開けたら血が流れてて。一瞬、「子宮から血が」とは思わず、「どこか怪我したかな?」と思ったような。でも、怪我してないからなと思って、急いで髪の毛を洗い流して、目を開けたら、鮮血と、女性の方なら誰でもわかると思うのですが、生理の時の血の塊のようなものがあったので、これは大変だ!ということで、急いでとりあえず、お風呂の外に出ました。びっくりしましたね。
覚田:
もちろん、そうでしょう。
すぐにお風呂から上がって、すぐに病院に行ったんですよね?
考香さん:
行かなかったですね。行った記憶がないんですよ。
覚田:
救急車呼んだとか。
考香さん:
ないんですよ。一週間以内には、病院に行ったのは行ったはずです。
その辺の記憶が。。もう、多分動転してたのもあるんですよね。
後は、まさか私はそんなことないだろうっていうふうに思ったんですけど、ググりました。
覚田:
イマドキですね。なんて検索したんですか?
考香さん:
「子宮 大量出血 がん」
覚田:
がんだと思ってたんですか?
考香さん:
ただ事ではないなぁっていうのは思ったので、「子宮 大量出血 がん」って調べたら、もうそこまで大量出血するのは、がんでも結構な進行具合だと書いてあったんですよ。
覚田:
結構、進行具合がひどいよって書いてあったんだ。
考香さん:
はい。それか、「子宮 大量出血」だったら筋腫とか。
覚田:
今は、ネットでパパパッと出てきますからね。
考香さん:
見た瞬間、え?まさかと思いながら、(携帯を)閉じて。
覚田:
閉じたんだ。。(笑)で、病院にすぐに行った。
考香さん:
うーん。行ったと言いたいところなんですけど、行かなかったんでしょうね。
なんか、ちょうどお盆休みだったんですよ、だからお盆休みあけに行ったと思うんですよね。でも、ちょっとその辺は記憶が。。
覚田:
気が動転していたということですね。
闘いの始まり 〜一人目のお医者様〜
覚田:
それで、最初の病院に行きましたね。その時はどんな?
考香さん:
若干覚悟をしているところはあったんですけど、無心の状態で自分で車を運転して病院に行ったのを覚えてますね。
覚田:
自分で行ったんですか?
考香さん:
自分で運転していきました(笑)はい。
覚田:
そのとき病院では?
考香さん:
病院では検査だけだったので。
市の無料検診のチケットがあって、それで行ったんですよね。
それを一週間ずっと眺めていたような気がしますね。行くべきか、行かないべきが。
覚田:
行くべきでしょう(笑)血が出てるんだから。
考香さん:
行くべきですね(笑)
行って内診をしたんですけど、やっぱり、「中で出血しているみたいだから、体がんの検診もしましょう」と言われて。
女性には子宮体がんと頸がんがあって、頸がんは入口で、体がんは奥側なんですね。
年齢的にも40歳過ぎてるからってことで、二、三千円出して、やる事を了承してやってもらったんですね。
それで細胞を取ったときに、また出血がすごくひどくって、その時点でお医者さんは何も言わなかったんですけど、ちょっとにおいが違ったんですよね。水みたいなおりものみたいなものがサラっていうのと、後、においが何か違うなっていうのは思って。
これはやばいなって、その時点でただ事ではないなって、また確信をしたのを自分の中で覚えてますね。
覚田:
でも、その時はお医者さんは何も言わないんですよね。
考香さん:
言わないです。
そして、「1週間以内に検査結果は郵送で知らせます。何かあれば電話します」って言ったんです。
覚田:
本来は結果は郵送で送られてくる。でも何かあったら電話がかかってくる。
考香さん:
そうなんです。
それで、8月29日の朝に、なんかもうその時点で自分はがんかもしれないって、徐々にわかってるから、体ががんみたいになっちゃってたんですね。
体がだるくってたまんなくて、寝てたら電話がかかってきて、番号を登録していたので、●●病院て出たから、あ!検査したところだ!と思って。
あーーって感じですよね、ベッドの中で。
電話取ったら、「すぐ来てください」と言われて。
「私、もしかして、検査結果悪いんですか?」って聞いたら
「とりあえず来てください」と。
覚田:
言わないんだ?
考香さん:
言わないですね。その時点で、看護師さんは告知は。
覚田:
看護師さんだからね。そうか、なるほど。
考香さん:
それで、もう絶対やばいなっていう感じでした。
覚田:
それですぐに行ったんですか?
考香さん:
そうですね。もうその時はすぐに行きました。
ちょうど娘が小学校6年生で登校日だったんですね。それで学校に行ってたので、母に学校のお迎えを頼んで、私、病院に行くから多分遅くなるかもしれないから、「がん」かもしれないからって。
なので、娘のお迎えが終わったら、一緒に病院に来てもらうようにという事を母に伝えましたね。怖かったですね。
覚田:
ここでまた自分で運転して行くんですね。
考香さん:
はい、自分で運転して行きました。
病院に着くと、もう正直看護士さんの態度がちょっと違ったので、違ったというか優しかったので。まあ、自分も多分、私は重いんだなって思って行ってるから優しく感じたのかもしれません。かわいそうに思ってくれてたような気もするんですけど。。
産婦人科と一緒だったので待合室に産婦さんもいらっしゃって。
結局一番最後に呼ばれて、まぁ悪いんだなって思いましたよね。昼前くらい、午前中の一番最後に回されたんですよね。
そして中に入った瞬間か、入るとき「ご家族は?」と言われた時に、もうどんどんどんどん本当にがんなんだなって。
覚田:
「ご家族は?」って良くない始まり方ですよね。
考香さん:
はい。
「一人です」って言ったら、「じゃあどうぞ」って言われたときに、お医者さんが顔を見なかった、パソコンを眺めていたので、絶対悪いんだって、だんだん確信しながら爆弾に近づいて行ったような状態ですね。皆さんとても優しい目で私を見てくれてました。
覚田:
看護師さんが並んでて?
考香さん:
そうなんです。お医者さんの向こう側に看護師さんがいて、すごく優しい目で見守ってくれてたので。
覚田:
余計怖いよね。
考香さん:
怖いですね。
覚田:
でも、まだ何も聞いてないんだよね?
そしていよいよお医者さんに言われる訳ですよね。
考香さん:
はい。がん細胞が出ましたと。
覚田:
そうか組織を取ってたから、その組織検査をしてわかったんだ、確実に。
考香さん:
確実に出ましたと。そして、頸部も体部も両方出ましたという形だったんですね。
ということは、何がんかなと思って見たら、子宮頚がんって書いてあったんですよね。だけどステージ(*1)とかは書いてなかったんですけど。
普通、入り口、頸部だけなんだけど、奥からも検出していて、広い場所からがん細胞が検出されている。内診で見てもがん自体を発見できないんだけど、子宮全部にがんがっていう言い方をされたので、 「え?子宮全部ががんなんですか?」みたいな感じですよね?
知識がないから、わからないから。もう。卵全部が腐っちゃったみたいな。イメージですよね。
「そうですね。子宮全部、体部からも出てますから」という形で少し濁して、ただ、「物が見つかりません」って。
(*1)ステージ:子宮頸がんは、進行状況によってステージ0からステージIVの5段階に分類されます。他のがんではステージI~IVの4段階が一般的です。表記にはローマ数字と英語の小文字が用いられ、がんの大きさ(広がり)、リンパ節への移転、他の臓器への転移の3つの要素の組み合わせで判断され、各ステージに応じた治療を行うことになります。
覚田:
ここががんだみたいなものがわからないということですね。
考香さん:
そうですね。普通、何センチ×何センチとか。
覚田:
そうですよね。ここにあって、このくらいの大きさですよ、だからステージがとかそういう説明があるけど、見つからないというか、(子宮)全部か、見つからないと言われたから、その日はそれで終わったんですか?
考香さん:
そういうことを言われて、組織検査とかも全部伝えてもらったんですけど、とりあえず物はないけど、子宮全摘できるか、全部手術ができればいいけどなみたいな感じくらいだったんですね。
後は、「検査。CT(*2)とかMRI(*3)検査により調べてみなければわかりません」と言われました。
だけどもだいたい、子宮の検査っていうのは内視鏡でセンチがわかるんですね。赤ちゃんが大体何センチとわかるように、がんが子宮の中にある訳なので何センチって計れるんですよ。
(*2)CT:コンピューテッド・トモグラフィ(Computed Tomography)。X線検査のひとつ。人体の断面や立体的な画像を撮ることができ、通常のレントゲンより正確かつ詳細な診断が可能になります。
(*3)MRI:マグネティック・レゾナンス・イメージング(Magnetic Resonance Imaging)。磁場を利用した画像検査のこと。人体の水分を含んだ箇所を撮影することができるため、造影剤を使わなくても血管を写すことができ、CTの検査ではわかりにくい症状も見つけやすいという長所があります。
覚田:
レントゲンとかじゃなくてね。
考香さん:
はい。それが計れないという、見つからないという状態だったので。
覚田:
そういうことを先生は紙に書きながら説明してくれてたんですね。
考香さん:
私の中では、全部ががんと思ってますから、相当難しいんだなって思いながら話終わりましたね。
その時点で母がそろそろ来る、というメールが入ったので一旦ちょっと外に出て、母と合流してもう一度診察室に入って、母も一応聞くということで2回入りましたね。一緒にもう一度説明を聞きました。
いきなりがん患者になっちゃったって感じですね。
覚田:
確実になったということですね。
普通だったらレントゲンとっておかしいって言って、MRIとってなんかあるぞって言って、組織をとって、がんですねと言う話の流れがある訳だけど、今回は子宮だったこともあって、すぐに組織検査から始まっているから、もう確実にわかったんですね。突然がん患者に。。
考香さん:
なりましたね。なんかもう、それこそ米粒のようにみんなが遠くにいった感じが。私が遠くに行ったんでしょうね。地球上にぽつんとひとりぼっちで残された感がすごくあり、全てのものがグレーになるというか、止まったような静止画のように。皆さん多分告知を受けたらそういう気持ちにはなると思うんですけど。
そして母に申し訳なかったですよね。
覚田:
それで、一旦お母さんと2人で外に出るんですよね。どんな感じだったんですか?
考香さん:
1回目に診察室から出るときにちょうど母が来て、私の姿を見るなり「もう」みたいな、どうしようもない「なんで」っていう悔しい顔をしたんですね。
覚田:
お母さんからしたら自分の娘が目の前で、「がん」を告知された。母親なら私だったらよかったのにっていう気持ちですよね。
考香さん:
そうです。もうなんでっていう気持ちが表情ににじみ出てて、
「ごめんなさい。がんになってごめんなさい」っていう気持ちになりましたね。
覚田:
そして2人で出て行ったんだけど、もう一度診察に一人で戻ったんですよね。
考香さん:
一人で戻って、「このままだったら私死にますか?」って聞いたんですね。
そしたら、「(このまま治療をしなければ)死にます」って言われましたね。まぁ、そうですよね。がんだから、がんだから死にますよね。確認のために一応聞いてみたかったんですよね。
「ああ、そうだ死ぬんだ」ってね、あの 死 というものを言葉として初めて聞いた、自分が淵に立たされるんだっていうことを、初めて聞いた瞬間でしたね。
覚田:
その時お子さんは?
考香さん:
看護師さんが外で見てくださってて。そして私と母が外に出た時、娘は「あー、ママ〜、おばあちゃ〜ん」みたいな感じで近づきそうになったんだけど、「おばあちゃんだけ残して、ちょっともう一回入る」って言って残していったんですね。
なんかもう、ランドセル背負っている姿を今でも思い出しますね。
(娘が)看護師さんと話してる声は聞こえながらも、がんの話をしていると言う。
覚田:
お子さんはその時はまだわからないわけですね。ただ、病院に来た、みたいな感じですよね。
考香さん:
ただ事ではないとは思っていたと思います。
覚田:
感じ取ったんでしょうね。
考香さん:
感じてたと思います。
死ぬ訳にはいかない!
覚田:
3人でそこから、、
考香さん:
歩き出しました。
覚田:
歩き出して、会計に行く訳ですよね。
考香さん:
会計に行き始めたんですけど、ちょっと小さな渡り廊下があって、そこのところで二人がもうたまんなくなっちゃったんですよね。母と私が。もうその場で泣き崩れて、その場に座って泣きくづれてましたね、3人で抱き合って。
その場で座って、抱き合って、泣いてた、という状態。多分他から見ればすごいことだと思うんですけど、私もなんか歩くのも精一杯って感じだったので、「車いす用意しましょうか」とは言われたんですけど、「歩きます」って言って歩いて。
覚田:
その時娘さんは。
考香さん:
泣いてましたね。がんっていう言葉はわかっていたかはわからないけど、もうお母さんが病気なんだということはその時点では分かってたので。がんとは娘には、その時点で言ったので。
覚田:
その時点で?
考香さん:
はい、その時点で。言っています。
覚田:
言葉はわからなくても、なんとなくその言葉が重要な、とんでもないことだっていことは伝わったでしょうね。
考香さん:
伝わってると思います。
そこから、親子、まず私と娘の闘いが始まるという形なんですけどね。
「私が、怒らすから?」って言われましたね。「私が怒れすから、病気になっちゃったの?」というような言い方をされましたね。
覚田:
よく子供は、自分が悪かったからママが病気になった、という風に思うらしいですね。
考香さん:
そうです。会計行く間、娘も泣いてましたね。聞いたら覚えてないって言うんですけど、気を使う子だったので。結構怒ってた時期だったんでしょうね(笑)
覚田:
家系的に、がんは多かったんですか?
考香さん:
多かったです。
うちは、父方の祖父と、母方の祖母と、それと父ががんだったんです。
覚田:
じゃあ、なんとなくもうそういう抵抗力っていうか、がんのことを知ってたり、勉強というか、知ってる人だったんですか?
考香さん:
してないです。勉強大嫌いだったからしてないんですけど、なんかみんな助かってたんですよ。父のお父さんも、結構なステージだったんですけど助かって、母のお母さんも胃を3分の2ぐらい切って助かって、父も進行がんだったんですけど、助かったんですよね。
覚田:
でも自分は死ぬと思ったんですね?その時は。
考香さん:
自分は死ぬと思いましたね。
覚田:
死んだら、結局、心臓の手術したお母さんと小学6年生の娘さんを残して死んでしまうということですよね。
考香さん:
そうです。
覚田:
その時にもうすでに、よし闘うぞと思ったんですか?それとも、もう悲観的な感じだったんですか?
考香さん:
あの、その当時は娘を残して死ねないなと思ったので、絶対生きなきゃいけないと思いましたね。どうにかして。
覚田:
それで、3人で闘って行こうっていう感んじになる訳ですね。
考香さん:
そうですね。3人というか2人ですよね、まず。どちらかというと、母にはあんまりに迷惑かけないでおこうと思ったので。もう、娘と2人という感じですね。
覚田:
で、ここから闘いが始まり、12人のお医者さんに出会いつつ、いろんな治療を行なっていくということですね。
ということで第一章終わりたいと思います。
ありがとうございました。
考香さん:
ありがとうございます。